ひいいの麻雀研究  ひいいの麻雀研究

 3−03 筋理論
 筋に関する各種理論。

    筋の一般論
     筋とは、数牌の間2軒(3つ差)の牌の組のことである。
     筋は、1つの色で6種類、全色で18種類ある。
     筋を、147、258、369と3つに分けて認識している人もいるようである。筋を覚える時に、「いいすうちい、りゃんうっぱ、さぶろうちゅう」と唱えて覚えることから、それぞれの3つをセットとして考えてしまっているようである。
     しかし、147の中で、14と47は別の筋である。14に対して7を、47に対して1を、「遠い筋」と呼ぶ。この「遠い筋」のことを、鈍筋[なまくらすじ]とも言う。
     麻雀における待ちには、両面・嵌張・辺張・双ポン・単騎の基本5形の待ちがあり、その他の待ちは、この基本5形の組合せになる。
     12345と持っていて36待ちの場合、3と6は両面であるが、同時に3は辺張である。
     23345と持っていて14待ちの場合、1と4は両面であるが、同時に4は嵌張である。
     1234と持っていて14待ちの場合、1と4は単騎(延べ単)であるが、これは広義の両面と言える。待ちの種類としてはあくまで単騎なのであるが、特性としては筋待ちになっているのである。双ポン待ちの2種類の牌がたまたま筋になっていることとは明らかに構造が異なる。
     待ちの基本5形の組合せは複雑であるが、広義の両面を優先に見ると、待ちは、両面を含んでいることが多い。
     麻雀の聴牌、および、和了の待ちにおいては、66.6%(ほぼ3分の2)が、両面待ち、ないしは、その複合形である。
     平和という役においては、両面待ちが前提であるし、他の役においても、一般には、嵌張・辺張・双ポン・単騎よりも両面を好むものである。基本5形の中では、両面待ちのみが2種8牌の最も枚数が多い待ちなのである。
     両面待ちになる、ということは、筋となる2牌を待つことになる。二萬・三萬持ち、の状態であれば、その両側の一萬と四萬の待ちになる。

     147を1つの筋、であると考えてしまうとまずいことがある。五萬・六萬持ち(四七萬待ち)の時に、一萬が切られていても、四萬は通らないのである。つまり、遠い筋は、筋ではない。一萬が切られている時に、四萬を切ることは、筋を頼ることにはならない。
     基本3面待ちの場合にだけは、147を1セットとした筋が表筋として通用する。

     捨て牌に表れている現物の筋のことを現物筋[げんぶつすじ]または表筋[おもてすじ]と言う。一萬が捨てられてる時に、一四萬は現物筋である。「一萬が通っても四萬が通るとは限らない」は、その通りであるが、一四萬が現物筋でも、四七萬は無筋なのである。
     通っていない筋のことを、無筋[むすじ]と言う。

    ●147・258・369の3面待ち
     147・258・369の3面待ちとなるパターンは3種類ある。

    (1)基本3面待ち
     基本3面待ちは、23456持ち(147待ち)・34567持ち(258待ち)・45678持ち(369待ち)の3種類ある。両搭と面子の連続複合によって形成される。

    (2)3面延べ単待ち
     3面延べ単待ちは、1234567持ち(147待ち)・2345678持ち(258待ち)・3456789持ち(369待ち)の3種類ある。

    (3)両面・延べ単複合3面待ち
     もう1パターン、同じ3面待ちになる場合がある。両面と延べ単の複合形である。
     2344567持ち(147待ち)・3455678持ち(258待ち)・4566789持ち(369待ち)・1234456持ち(147待ち)・2345567持ち(258待ち)・3456678持ち(369待ち)の6種類ある。

     なお、多面待ちについては、別章で詳述する。

    筋の危険度統計値
     18個ある筋のうち、色別の差はないが、14・25・36・・・・69の6種類に絞って見れば、左右対称(1と9、2と8は同じ、ということ)に、危険度に統計的な違いがある。
     このことは、後述する捨て牌からの筋読みとは別に、それ以前の知識として、「一般的にどの筋がどの程度安全で、どの筋がどの程度危険か」を定量把握するのに役立つ。

     面子構成寄与率から、搭子別の構成確率を計算する。
    面子構成率
    14 または 696.92%
    25 または 587.91%
    36 または 478.14%
     中寄りの方ほど、両搭を構成しやすい。つまり、中寄りの牌ほど、危険度が高い、と言える。単純に、3は1の1.176倍危険である。2は1の1.143倍危険である。3は2の1.029倍危険である。

     また、ここでは関係ないが、和了確率も同時に示す。
    和了確率
    14 または 697.74%
    25 または 586.20%
    36 または 475.14%
     構成しやすい方が和了しづらい、ということが判る。

    表筋
     捨て牌の中にある数牌の4・5・6のことを、筋心牌[きんしんぱい]と言う。147、258、369の真ん中の牌のことである。筋心牌の筋牌を表筋という。
     筋心牌が捨て牌に表れた時に、その表筋の待ちは、両面待ちにおいてはあり得ない。よって、両面ノーチャンスとして筋心牌の表筋を切ることを、「筋を頼る」と言う。
     基本5形の待ちのうち、66.6%を占めるのが両面待ちであることを考えると、確率としては、筋を頼って表筋を切ることは、有効な守りの戦術となる。
    筋心牌表筋
     一萬(筋心牌ではない)が捨てられている時に、四萬は表筋にはならない。つまり、二三萬持ちの一四萬待ちはないが、五六萬持ちの四七萬待ちはありうる、と言うことである。

    東家の捨て牌
         ドラ:
     この河には、筋心牌はない。
     よって、この立直に対して、筋を頼って捨て牌選択することはできない。

    南家の捨て牌
         ドラ:
     この河には、筋心牌は1枚、六筒だけがある。
     この立直に対して、筋を頼って切るとしたら、六筒の表筋の、三筒か九筒、ということになる。


    ・表筋が安全である理由
     両面待ちがない、ということから、表筋が安全である、ということが主たる理由である。しかし、それ以外にも、表筋が安全であるという理論を展開できる。
     序盤に、4と8の浮き牌を持っている時に、どちらで搭子ができる可能性が高いか? 4にくっついて搭子となる数は4種類で、8にくっついて搭子となる数は3種類、また、8に9がくっついた時は辺搭となり、その後に切り崩される可能性が高い。よって、4の方が大事にされる。48持ちに9を引いて489の形になった時に、4を切ると筋引っかけになるのであるが、序盤に辺搭を確定させ、4を切る可能性は低いのである。つまり、先に9を引いて89の辺搭ができても、4を保持することにより、2を引けば、89の辺搭を崩しても24の嵌搭を保持する(両搭ならばなおさら)のである。よって、序盤に筋心牌が出ているとすれば、その表筋が筋引っかけになっている可能性は低いと言える。
     ただし、いくつかの特別な役が絡んだ場合には事情が異なる。例えばこの例の場合だと、789の三色同順が見えているならば、早い巡に4が切られる。また、七対子、全帯幺などの変則手の場合には表筋の方が危険である。

    ・表筋の罠
     表筋が両面ノーチャンスであることから、わざと表筋で待つことを一般に引っかけという。正確には筋引っかけ、なのであるが、筋引っかけは、引っかけの代名詞とも言える。
     特に無理に引っかけを作ろうとしなくても、二嵌形が最後に残ると、必然的に筋引っかけになり易い。
         自摸:  ドラ:

     この牌姿から、一三五の二嵌形の方で先に面子ができれば(つまり二萬か四萬を引けば)、筒子で3面待ちになるが、このような場合には、四筒・六筒・七筒のいずれかを先に引く可能性が高いために、二嵌形が最後に残ることになる。そして、一三五萬の二嵌形から1枚を切って待ちを作るのであるが、この時に、断幺九や三色同順など特別な役が 絡まなければ、筋心牌の五萬を切って嵌二萬待ちで受ける。これは、二萬が五萬の表筋であるため、出やすいということと、一般に嵌四萬よりも嵌二萬の方が和了しやすい、ということに因るものである。これにより、筋引っかけが完成することになる。
     立直牌で筋引っかけすることを、直掛け[ちょくがけ]と言う。二嵌形からの切り出しの時に、直掛けになりやすい。
     このような二嵌形からの筋引っかけは聴牌時に起こりやすい。特に直掛けに注意し、立直牌が筋心牌の場合は、その表筋に注意すべきである。また、麻雀巧者は、直掛けを隠蔽するために、聴牌から1巡ないし2巡置いて立直をかけたりする。よって相手の特性によっては、立直牌でなく、その前巡または前々巡の捨て牌の表筋を疑う。
     一般に捨て牌の早い巡に出た筋心牌の表筋の方が安全である。しかし、二嵌形の認識が薄い牌効率が悪い打ち手の場合には、早い巡に二嵌形を崩してしまうことがある。

     また、端寄りの嵌張待ちで立直をかけた後に、立直者が筋心牌を自摸切りすることを、後引っかけと言う。後引っかけは、立直者の意図しない筋引っかけになるために、出和がりやすい。

    裏筋
     捨て牌の1つ内側の牌と、その筋牌のことを、裏筋と言う。
     一萬が捨てられている時の二五萬、七萬が捨てられてる時の三六萬、である。
     七萬が捨てられている時の五八萬や六九萬は、裏筋とは言わず、跨ぎ筋(後述)と言う。
    捨て牌裏筋
     捨て牌が五萬の時だけ、一四萬と六九萬の2つの裏筋がある。
     また、裏筋には、一四と六九の筋は、1回しか出て来ない。他の筋は2回ずつ出てくる。

     一般に裏筋は危ない、と言われる。その理由は、手作りのプロセスに因る。
     また、一般に裏筋は、序盤よりも聴牌に近い時にできやすい。


    北家の手牌
         自摸:  ドラ:
     北を引いて一向聴である。萬子の形は二四五萬、索子の形は二五六索である。このような場合、二萬よりも二索が先に切られる。なぜかというと、雀頭不確定性から、である。三萬を引いた時に延べ単にできる可能性を残すのである。二索は疝気筋、二萬は裏筋、であり、早く切られた牌の方の疝気筋が危なくて、後から切られた方の裏筋が危ない、ということが判る。

    南家の手牌
         自摸:  ドラ:
     聴牌であるが、役がない状態から、四萬を自摸ると、一萬を切って、役として平和を確定させ、二五萬の両面待ちにする。すると、捨て牌に一萬が出て、その裏筋の二五萬が和了牌になるのである。
     聴牌状態でなくとも、嵌搭から両面に変わる時には、裏筋が生まれる構造になる。

    間4軒
     同色の捨て牌に間が4軒(差が5つ)あるものがあったら、その裏筋が最も危険である。
     この間4軒というのは、裏筋と裏筋の複合なのである。一萬と六萬が捨てられている時に、一萬の裏筋である二五萬と、六萬の裏筋である二五萬、この2つの裏筋が合う、ということである。
    捨て牌(間4軒)裏筋
    南家の手牌
         自摸:  ドラ:
     このような手牌において、一萬を切るのが常道である。筒子は、七筒が浮いているようにも見えるが、三四筒の両搭と五七筒の嵌搭であるし、索子は五六索の両搭と七八索の両搭である。萬子は一三萬の嵌搭と四六萬の嵌搭なので、萬子が最も愚形である。
        萬子…嵌搭+嵌搭 (2種8牌)
        索子…両搭+両搭 (4種14牌)
        筒子…両搭+嵌搭 (3種11牌)
     よって、萬子を整理して一萬と六萬を切り、三四萬の両搭に固定するのである。
     つまり、134からの1切り、346からの6切り、と見ることができ、これが間4軒ができるプロセスとなる。捨て牌には、一萬と六萬が出ることになり、裏筋複合の間4軒となる。
    跨ぎ筋
     捨て牌を跨ぐ筋のことを、跨ぎ筋(またぎすじ)と言う。
     捨て牌が一萬と九萬の場合には、跨ぎ筋はない。
     捨て牌が二萬と八萬の場合には、それぞれ、一四萬と六九萬が跨ぎ筋になる。捨て牌が三萬〜七萬の場合には、跨ぎ筋は2種類ずつ存在する。
    捨て牌跨ぎ筋
     跨ぎ筋は、233の形から3を切ることによって生まれることが多い。

    南家の手牌
         自摸:  ドラ:
     一向聴である。一四萬・三萬・九萬・二五八筒を自摸れば聴牌、という牌姿で、最後に筒子の3面待ちを残したいところであるが、面子が早く確定する確率が高いのは筒子の方であり、最終的には萬子待ちの聴牌になる。五筒を自摸って、二萬か三萬を切れば聴牌であるが、平和の確定と、両面待ちを採るのが普通であり、233の形から、三萬が切り出されることとなる。これで跨ぎ筋ができる。

    北家の手牌
         自摸:  ドラ:
     北を引いて一向聴である。九筒が雀頭になる可能性が高いので、ここから五索を先に切る人もいるであろうが、五索を先に切ると二萬が面子構成に寄与しない無駄牌になる。牌効率を考えれば、二萬を先に切って、五索か九筒を引いて暗刻になっても聴牌できるように考えるものである。よって、二萬が先に切られ、後から五索が切られる。
     ここで、二萬切りだと裏筋、五索切りだと跨ぎ筋になる。二萬切りの後、三六萬を引けば五索を切って四七索待ち(跨ぎ筋)、四七索を引けば五索を切って三六萬待ち(裏筋)となる。どちらを先に引くかの確率は同じであり、「聴牌に近い捨て牌の後ろの方の牌においては、裏筋よりも跨ぎ筋の方が危ない」と言うようなことは言えない。
     二萬→五索と切られた時に、「どちらの跨ぎ筋が危ないか」に対しては後の方の五索の跨ぎ筋、が答えである。そして、「どちらの裏筋が危ないか」に対しても、後の方の五索の裏筋である。この例の場合には外れているのだが。
     そして、重要なことは、跨ぎ筋の発生確率である。跨ぎ筋は、五五六索から五を切るという対子落としが前提であり、面子多々状態から起こる。今手牌に持っている牌と同じ種類の牌を引く可能性は、違う種類の牌を引く可能性に比べて 4分の3ほどである。もし対子ができた場合に、面子手の和了形には雀頭があるので、雀頭として利用される可能性が増す。
     つまり、跨ぎ筋が発生する可能性は、跨ぎ筋が発生しない可能性よりも確実に低い、のである。
     よって、「裏筋と跨ぎ筋のどちらが危ないか」に対しては、裏筋の方が危ないのである。


     平和確定打ち、または、両面確定打ちする人は、233の形からの3を早く切る人がいる。これを先切りと言う。先切りする人の捨て牌相では、序盤に跨ぎ筋が出やすくなる。
     しかし、一般には、牌効率を考えると、先切りは役を確定できないデメリットはあるが聴牌が遅いので、あまりなされない。よって序盤の跨ぎ筋はない、と読むのが本道である。 つまり、聴牌に近い段階の方が跨ぎ筋が出やすい。
     また、1334の形から通常は1→3の順に切り出すものであり、それが定石であるが、わざと逆に3→1と切り出すことを逆切りと言う。これも先切りと同様に両搭の確定性を高めるためのものであるが、逆切りの場合は先切りよりもさらに有効に、「2待ちはない」と読ませる迷彩(捨て牌装飾)の効果がある。
    疝気筋
     表筋や裏筋や間4軒などに比べて、疝気筋(せんきすじ)の認知度は低いと思われる。
     疝気筋とは、裏筋の裏筋である。1に対する36、2に対する47などである。裏裏筋(うらうらすじ)とも言う。
     5に対する疝気筋は存在しない。

     南家の序盤の捨て牌が、こうであった時に、これだけの情報から何が読めるであろうか?
       ・・・
     疝気筋のことを知っていると、三索よりも三萬の方が危険であることが読める。
    捨て牌疝気筋
    なし
     疝気筋は、聴牌に近い時ではなく、序盤の方に表れやすい。これは、序盤の浮き牌処理の論理に因るものである。

    南家の手牌
         自摸:  ドラ:
     序盤(3巡目)、3向聴である。1巡目の捨て牌は北、2巡目の捨て牌は西であった。
     四筒を自摸った。切るのは、一萬か一索である。この時、通常の打ち手は、一萬を選択する。その理由は、同色の持ち牌構成が、萬子の方が間2軒(四萬との間が2軒)で、四萬と筋になっているから、である。一索は、五索と間3軒になっており、一索・五索を残して二嵌の渡りを残そうと考えるからである。
     このように、浮き牌の一萬を切る時、これが疝気筋になるのである。一萬切りの、三六萬待ち、である。
     南家の序盤の捨て牌は、こうなる
       ・・・
     この捨て牌から読めることは、一索より先に出た一萬の疝気筋、三六萬待ちを疑え、と言うことである。一般に疝気筋よりも裏筋の方が危ないのであるが、序盤に出ている牌に関しては、疝気筋の方が危ない。少なくとも、一萬の方が一索より先に出ているので、一索の疝気筋(三六索)よりも、一萬の疝気筋(三六萬)の方が危険である。
     因みに裏筋を考えると、後に捨てられる方が危険であることから、二五索の方が二五萬よりも危険である。
     では、疝気筋で危ない方の三六萬と、裏筋で危ない方の二五索は、どちらが危険なのであろうか? もし、一索が曲がって立直だとしたら、裏筋を優先し、二五索が最も危険と読むべきである。しかし、この後、何巡も置いて立直がかかったとしたら、一索の裏筋効果は薄れ、一萬の疝気筋効果は残るので、三六萬の方が危険と読むべきである。

    ドラ筋
     ドラを含む筋のことをドラ筋と言う。
     そして、ドラ筋の跨ぎ筋のことをドラ近筋と言う。

    北家の手牌
         自摸:  ドラ:
     このような手牌においてドラの存在を無視すれば、二筒を引いたので、七索を切るところであるが、ドラそばの浮き牌は最後の最後まで大事にしたいところ、ドラ八索を受け入れ、またはドラ待ちにしてドラ含みで和がりたい、少なくとも将来、ドラを自摸切りする羽目に陥りたくない、という理由から、五筒・七筒の嵌搭を落とすものである。
     そして、その結果、
         ドラ:
     五八索待ちの聴牌、つまりドラ筋での聴牌、になるのである。
     この例では、六索を引いたことよって、ドラ筋待ちになったのであるが、もしドラ八索を引いたら、六九索待ちになり、ドラ近筋の待ちとなる。
     ドラは単独で1飜という強力な武器なので、ドラを使いたいがために、無理にでもドラ入り面子を構成しようとする。その結果、ドラ筋待ちやドラ近筋待ちが多くなるのである。
     では、ドラ筋待ちとドラ近筋待ちのどちらが危険かと言えば、それはドラ近筋待ちなのである。なぜかと言うと、浮き牌を1枚持っている時に、それを見極めなければならない分岐点がある。その時に、その浮き牌がドラなのかドラそばなのかによって、持たれ方が異なる。やはりドラそばよりもドラの方が大切なのである。上記の例では他に大した役は見えないが、ドラ1よりも高い役が見えたら、将来のドラ1期待よりも、そちらの役を選択することがある。また、一般に、ドラそばの七索なら切ってしまう、しかし、ドラ本体は切れない、という守りの心理も働くのである。
     よって、ドラそばとドラと、どちらが単独で長く持たれるかを比較すればドラ、ということになり、それにくっついて待ちができた時には、ドラ待ちよりドラ近待ちになる可能性の方が高いのである。
     ここで論じているのはあくまで両面待ち、筋待ちの時の、ドラ筋とドラ近筋の比較であって、ドラ単騎やドラ双ポンのケースを含め、さらに放銃期待点のことを考えれば、守りの上ではドラ本体を切ることほど愚かなことはないことはご認識頂きたい。


    ●ドラ切り立直に側聴無し <正論>
     ドラを2枚持っているならば待ちが悪くともドラを2枚とも使った待ちにするのがセオリーであるため、ドラを切って立直するような場合には、ドラそばの待ちはないということ。

    ●ドラ近捨てにドラ入り手あり <正論>
     ドラが1枚もない状態ではドラの受け入れを考えてドラそばの浮き牌や搭子を持つ。もしドラが入った場合にはドラそばが捨てられることがある。またドラが2枚、または3枚になった時には、ドラを雀頭または暗刻として固定させるため、ドラそばの牌が捨てられることになる。

    ●ドラ・ドラ近が切られた時の状態
     序盤にドラが切られたとしたら、これは大変危険な信号である。大きな役狙いをしている可能性が極めて高い、と読める。終盤にドラが切られたとしたならば、聴牌だと思った方がよい。
     序盤にドラ近が切られたとしたら、ドラ待ち搭子があるか、ドラ対子と読むのが普通である。ドラ暗刻の可能性もあるが、待ち読み一般論では暗刻可能性は低いと読む。中盤・終盤にドラ近が切られたとしたら、ドラが入ったか、ドラ入り面子が確定したと読む。つまり、ドラ近が序盤に切られたら、ドラ筋は危険なのであるが、中盤・終盤に切られた場合は比較的安全なのである。

     ドラ:
     持ち牌捨て牌説明
    序盤 ドラ待ちを確定するためドラそばを切る。
    ドラ待ちを確定するためドラそばを切る。
    ドラ対子を確定するためドラそばを切る。
    中盤 2枚目のドラを期待するが、
    ドラそばは危険なために見切る。
    終盤 特に聴牌時にドラを切って聴牌に取る。
    単独のドラを最後に見切る。
    単独のドラそばを最後に見切る。

    ●ドラ筋が切られた時の状態
     ドラが七筒だとすると、その筋の四筒は比較的切られやすい。
     下表の5例を比較すると、もし序盤に四筒が切られたとしたら、ドラ待ち・ドラ近待ちがありうる。もし中盤に四筒が切られたとしたら、ドラ近待ちがありうる。もし終盤に四筒が切られたとしたら、ドラ待ち・ドラ近待ちの可能性は薄い。

     ドラ:
     持ち牌捨て牌説明
    序盤 当然のごとく、四筒を切る。ドラ近待ちとなる。
    二嵌を持っている場合、ドラ入り面子が欲しいために、早いうちに四筒を切ってドラ待ち嵌搭を確定させる。ドラ待ちとなる。
    中盤 ドラを使いたいので、両搭残しではなくあえて愚形の嵌搭を残す。ドラ近待ちとなる。
    ドラ筋は危険との認識から早いうちに四筒を切る。ドラ待ち・ドラ近待ちはない。
    終盤 四五六筒と面子を持っていて、ドラ七筒を引けば、1軒ずらしして四筒を切る。ドラ待ち・ドラ近待ちはない。

    光牌
     光牌[ひかりはい]と言う言葉に厳密な定義はない。
     捨て牌に字牌や端牌が多い中で、特に筋心牌(数牌の4・5・6のこと)が1つ混じっているような場合に、その牌を光牌という。
     西、東、一萬、九索・・・などと幺九牌が並ぶ中に1つだけ五筒があったとしたら、それが光牌である。そして、その光牌をキーとして、待ちを読むものである。

    南家の捨て牌
         ドラ:
     この河には、筋心牌は1枚、六筒だけがある。この六筒が光牌となる。
     他の牌よりも、六筒に着目して、まずその裏筋、そして、跨ぎ筋、を考える。六筒の裏筋二五筒は二筒が現物になっているのでない。すると跨ぎ筋を考え、四七筒と五八筒が危ない、と考えるものである。
     特に光牌が5の場合には、その裏筋の14と69の2つの裏筋を本命と睨んだりするのが、光牌の読みである。
     私は、この考えには同調できない。上記の南家の捨て牌において、六筒を光牌と捉えて、「四七筒と五八筒が本命」とした場合に、ドラ筋や八索の裏筋の四七索との危険度比較はどうなるのかが不明確である。
     麻雀の待ち読みは、危険度の相対比較が基本であるが、その相対比較論にならないのである。

    暗刻筋
     暗刻筋は、これまで掲げてきた「筋」にまつわる用語とは趣が異なる。
     表筋・裏筋・間4軒・跨ぎ筋・疝気筋・ドラ筋・光牌、いずれも、捨て牌の特性からの待ち読みの理論なのであるが、暗刻筋と言うのは、自分の手牌からの読みである。
     暗刻筋とは、自分の手牌の中に暗刻で持っている牌の筋は危険である、という待ち読みの理論である。
     「3−02見えている牌」の中で詳述する。

    筋理論による危険度判断
     実践的応用として、上記に書いた筋理論だけで、危険度を読む。
     なお、現実には、この他に、見えている牌や壁や手牌や牌構成読みや役読みや放銃期待点など、他の多くの理論を複合させて危険度判断を行わなければならないが、ここでは、筋理論だけを応用することとする。

     これまでは、よくある麻雀戦術の市販本などでは、捨て牌が提示されていて、「こうこうこういう理屈でこう読む」→「当たり牌は二五萬と読める(一点読み)」→回答が出ていて、それは筆者の読みの記述通りになっている、という実にワンパターンのものしかなかった。
     さらには、表題に「三色の読み方」などと記されており、ちゃんと回答の手は三色同順になっていて、筆者の読みは実に見事にズバリと当たっているのである。
     こんな本を読んで、待ち読みができるようになってきた、などと思ってはいけない。
     同じ捨て牌相でも、異なる待ちはありうるのである。全く同じ捨て牌でも、配牌と自摸牌が異なる。よって待ちは異なってくるものである。
     待ち読みの基本は、決して、絶対に一点読みではない。譲っても三点読みでもない。すべての筋に対して、相対的な危険度を付けること、である。
     下に示した捨て牌を見て、一点読みができるのか? そんなことは無理なのであって、できると思う方がおかしい。
     しかし、では現物以外はすべて危ないのかというと、そうではない。放銃リスクは当然あるのだが、かなり危険度の高低には差があるものである。
     各筋別の危険度を相対的に把握すること、これが筋理論の統括となる。


    東家の捨て牌
         ドラ:

     この捨て牌から、どの筋が最も危険だと読めるのであろうか? また、2番目に危険なのはどの筋で、その差はどれくらいあるのであろうか?
     上に述べた筋理論だけで、無理矢理定量化してみる。

     筋は全部で18あるが、そのうち現物筋となっているのは、六九索・一四筒・五八索・六九萬・二五萬の5つである。この5つの筋は危険度ゼロである。
     そして、残る13の無筋に関して、その危険度を定量化する。

    (1)表筋
     筋心牌がないので、表筋の読みはできない。

    (2)裏筋
     間4軒はないので、通常の裏筋で考える。裏筋は捨て牌の後半になってからの方が危険度が高い。よって、捨て牌の後ろの方から順に裏筋をあげると、三六萬・二五筒・五八萬・四七索・五八索、の順になる。この順に危険度が高い。 このうち、五八索は現物筋であるので除外する。

    (3)跨ぎ筋
     跨ぎ筋を構成する捨て牌は、二萬と八索の2つである。跨ぎ筋も、後半の方が危険である。二萬の跨ぎ筋は一四萬、八索の跨ぎ筋は六九索であるが、六九索は現物筋であるので、消える。よって、跨ぎ筋は一四萬のみ、となる。

    (4)疝気筋
     疝気筋は捨て牌の早い方に効く。四七索・三六筒・三六索・四七萬・四七萬の順に危険である。四七萬は疝気筋が重なることになる。

    (5)ドラ筋
     ドラ筋は五八萬、ドラ近筋は六九萬である。しかし、六九萬は現物なので、除外する。

     裏筋、疝気筋、ドラ筋の最も危険なものを5とし、以降1づつ減らしてポイント化する。
     跨ぎ筋に関しては、3とする。
     そして、統計値と、無理矢理、足し算をして危険度を定量化してみる。

    現物筋統計値表筋裏筋跨ぎ筋疝気筋ドラ筋合計
    一四萬 6.92%    9.92
    二五萬現物7.91%     
    三六萬 8.14%    13.14
    四七萬 8.14%   2+1 11.14
    五八萬 7.91%   14.91
    六九萬現物6.92%     
    一四筒現物6.92%     
    二五筒 7.91%    11.91
    三六筒 8.14%    12.14
    四七筒 8.14%     8.14
    五八筒 7.91%     7.91
    六九筒 6.92%     6.92
    一四索 6.92%     6.92
    二五索 7.91%     7.91
    三六索 8.14%    11.14
    四七索 8.14%   15.14
    五八索現物7.91%    
    六九索現物6.92%     

    危険度順位危険度
    15.14
    14.91
    13.14
    12.14
    11.91
     危険度1位は、裏筋と疝気筋が複合した四七索である。
     危険度2位は、ドラ筋と裏筋が複合した五八萬である。

     無理矢理の定量化であり、重み付けの根拠不明瞭であるし、単に足し算というのも大変乱暴なのではあるが、何も定量化しないより100倍ましである。

     で、待ちは何だったのかって? 教えない。
     これは実戦牌譜から引用したものなので、当然答えはあるのだが、そんな答えを見ても、何の学習効果もない。その答えは、偶然の産物だったのである。確率が低いことが起こることも、あるのである。
     え、どうしても知りたいって? しょうがない・・今回だけ、教えてあげる。
     この東家は四七索待ちであった。終盤、高めを自摸り、メンタンピン三色自摸でいんぱちゲット。第一打の九索の疝気筋と、8巡目の八索の裏筋の複合ということで、上の危険度では危険度順位1位、最も危険と計算できたものであった。
     くどいようであるが、この結果はたまたまだったのであり、無筋の中では最も危険度が低いと読んだ  六九筒と一四索が当たりだったかもしれないのである。しかし重要なことは、危険度の低い牌を選んで切ること、危険度の高い牌は止めて搭子を構成するように打つこと、なのである。

    南家の捨て牌
         ドラ:
     この河には、筋心牌は1枚、六筒だけがある。
     筋は全部で18あるが、そのうち現物筋となっているのは、一四筒・二五萬・二五筒・三六筒・六九筒・一四索・三六萬・五八索の8つである。この8つの筋は危険度ゼロである。
     そして、残る10の無筋に関して、その危険度を定量化する。

    (1)表筋
     筋を頼って切るとしたら、六筒の表筋の、三筒か九筒、ということになる。

    (2)裏筋
     間4軒はないので、通常の裏筋で考える。裏筋は捨て牌の後半になってからの方が可能性が高い。よって、捨て牌の後ろの方から順に裏筋をあげると、四七索・四七萬・二五索・二五筒・三六筒・三六萬、の順になる。この順に危険度が高い。
     しかし、二五筒・三六筒・三六萬の3つは、現物筋であるので除外する。

    (3)跨ぎ筋
     跨ぎ筋を構成する捨て牌は、二萬・二筒・六筒・三萬・八索の5つである。跨ぎ筋も、後半の方が危険である。後半から、六九索・一四萬・二五萬・四七筒・五八筒・一四筒・一四萬、の順になる。
     しかし、二五萬・一四筒は現物筋であるので、消える。

    (4)疝気筋
     疝気筋は捨て牌の早い方に効く。三六筒・四七萬・四七筒・一四筒・三六索・五八萬・三六索の順に危険である。
     しかし、三六筒と一四筒は現物筋であるので、除外する。

    (5)ドラ筋
     ドラ筋は一四萬と四七萬、ドラ近筋は二五萬・三六萬である。

     裏筋、疝気筋、ドラ筋の最も危険なものを5とし、以降1づつ減らしてポイント化する。
     跨ぎ筋に関しては、3とする。
     そして、統計値と、無理矢理、足し算をして危険度を定量化してみる。

    現物筋統計値表筋裏筋跨ぎ筋疝気筋ドラ筋合計
    一四萬 6.92%  2+1 13.92
    二五萬現物7.91%    
    三六萬現物8.14%    
    四七萬 8.14%  21.14
    五八萬 7.91%    9.91
    六九萬 6.92%     6.92
    一四筒現物6.92%     
    二五筒現物7.91%     
    三六筒現物8.14%表筋    
    四七筒 8.14%   13.14
    五八筒 7.91%    8.91
    六九筒現物6.92%表筋    
    一四索現物6.92%     
    二五索 7.91%    10.91
    三六索 8.14%   3+1 12.14
    四七索 8.14%    13.14
    五八索現物7.91%     
    六九索 6.92%    9.92

    危険度順位危険度
    21.14
    13.92
    13.14
    13.14
    12.14
     裏筋と疝気筋とドラ筋の3つが複合した四七萬が最も高い危険度であると計算できた。
     危険度2位が、一四萬である。二萬と三萬が捨て牌にあり、この跨ぎ筋が複合したことと、ドラ筋によって2番目の危険度になったが、一般に、二萬と三萬が捨て牌にある時、しかも二萬が早い巡に切られていて、三萬が立直直前であることから、筋理論以外の理論を組み合わせれば、一四萬待ちの危険度はもっと低くなる筈である。


     これらの定量化は、いくつかのサンプリングをした上で重み付けをしており、大きく外れるものではないが、理論の組立に問題がある。
     今後、大量の牌譜を分析して、実戦データからの裏筋危険度や疝気筋危険度の高さを立証して行きたいと思う。

       ↓

     経緯報告。
     いくつかのプログラムを作成し、実戦データからの裏筋危険度や疝気筋危険度を探ろうとしたが、現在のところうまく行っていない。
     聴牌の待ちを抽出し、例えばそれが四七萬だとしたら、捨て牌に三萬・八萬が出ていれば裏筋、二萬・九萬が出ていれば疝気筋、なのであり、それをカウントすることはできるが、その数がどうならば、裏筋危険度が高いと言えるのかの客観的な論理形成が難しい。「三萬が出ていた。裏筋である。しかし三索も出ていた。三索の裏筋はどうなるのか?」と言うことである。捨て牌分析に関しては、多くのテーマがあり、他に考えている論理もあるので、それらと合わせて、今後検証して行きたいと思う。

     なお、抽出した多量の待ちと捨て牌を眺めてみると、筋うんぬんの前に、色傾向の方が強いように感じる。つまり、捨て牌に萬子が少なければ萬子待ち、という非常に単純な読みの方が、裏筋よりも、待ちと捨て牌の相関が高いように感じる。
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