兵庫県豊岡市
河原歯科医院

検視活動続ける山南の歯科医・河原兄弟がドラマに　日航機事故後の遺族の物語

　日航機墜落事故で父を失い、　その後、　歯の情報から遺体の身元を割り出す検視の活動を続けている丹波市歯科医師会長の河原悟さん　（58）　＝丹波市山南町井原＝と、　兄で同じく歯科医の忍さん＝豊岡市城崎町＝らの実話を元にしたドラマ　「尾根のかなたに〜父と息子の日航機墜落事故」　が、　ＷＯＷＯＷプライムで10月７日と14日の午後10時から前編、　後編で放映される。　河原さんは　「ダイジェスト版を見て、　当時をまざまざと思い出し涙が出た。　事故から27年が経ち、　当時を知らない若い人にも見てもらえたらうれしい」　と話している。

　原作は、　門田隆将さんによる同題のノンフィクション。　日航機事故に巻き込まれて父を亡くした３組の家族にスポットを当てて父と息子の物語を描いている。　ドラマは豪華キャストが出演し、　河原さんのストーリーでは忍さん役を伊勢谷友介さん、　悟さん役を渡辺大さん　（渡辺謙さん長男）　が演じる。　
　河原さん兄弟は１９８５年８月の日航機墜落事故当時、　地元歯科医師会とともに検視活動に携わった。　凄惨な現場で、　父親を見つけることはあきらめかけたが、　警察、　看護師、　歯科医のボランティアらの必死の努力で遺体の一部を連れ帰ることができた。　この時の恩返しがしたいと、　２人は翌年、　兵庫県で全国２番目の警察歯科医会立ち上げに奔走した。　以来活動を続け、　阪神大震災、　ＪＲ福知山線脱線事故でも身元判明に貢献した。　
　悟さんは　「父親を見つけてもらえた時の喜び、　感動は忘れられない。　他の遺族にも早く安心してもらいたいという一心でやっている。　社会的な力添えをさせてもらっているのは親父のおかげ。　表には出ない仕事だが、　使命と思い、　できる限り続けたい」　と話している。

丹波新聞　2012年10月04日

　豊岡市城崎町の河原歯科医院の先代の院長、河原道夫先生は、23年前、1985年8月12日、歯科医師会の会合の帰途、日航ジャンボ機墜落事故でお亡くなりになりました。
　河原道夫先生の長男の河原忍先生（豊岡市城崎町：河原歯科医院現院長）と次男の河原悟先生（丹波市山南町：河原歯科医院現院長）は、事故後すぐに現場の群馬県に向かいました。ご兄弟はお２人とも当時歯科医師であったことから、特例として安置所に入り現地の警察歯科医を手伝い、約２週間にわたって遺体の確認作業に携わりました。そこで事故の衝撃の強さから歯型が身元の決め手になることが多いことを知りました。
　２週間後に豊岡市城崎町に戻って葬儀を挙げている時にお父様の左腕が見つかったとの連絡が入ったそうです。

>　忍さんは「あのような状況の中、父を探し出してもらったことに、関係者への感謝の気持ちでいっぱいだった」と当時の気持ちを語った。
【2005/05/23　神戸新聞】

　また、それからさらに約２週間後、遺品である腕時計が見つかりました。墜落時に身に着けていた腕時計は、表面のガラスと針は衝撃で散りバンドもなく残るのは文字盤のみでした。

>　歯科医を継ぐ忍さんは今も、父が残した歯科器具で患者と向き合う。仏前には時を刻まなくなった腕時計。「本人の無念さ、安全へのみんなの願いが、ここにある」。色あせた金色の文字盤が、子や孫の世代に事故を語り継ぐ。
【2008/08/10　神戸新聞】

　警察の要請を受けて、事件や事故の被害者の身元確認や捜査に協力する歯科医は「警察歯科医」と呼ばれます。日航機墜落事故では地元群馬県の警察歯科医が大きな力となりました。兵庫県では、現地で遺体の身元確認作業を手伝った河原先生兄弟が必要性を訴え、事故翌年の1986年に「県警察歯科医会」が発足しました。

　1995年1月17日の阪神・淡路大震災では、河原先生兄弟を含む県警察歯科医会は３０日間寝袋で寝起きして６８体の身元を確認しました。

　2005年4月25日のJR福知山線脱線事故では、発生翌日から３日間にわたって、河原先生兄弟ら延べ２０人が遺体安置所となった尼崎市記念公園総合体育館に詰め、身元が分かる遺留品が乏しかったり、損傷が激しい５体について、治療痕や歯並びを照合しました。遺体を傷つけないよう、時間をかけて丁寧に口を開けて調べました。発生から２日以上たって、身元が確認された女性の遺体がありました。歯の照合でようやく分かりました。遺族は歯科医たちに深々と頭を下げたそうです。

>　県警察歯科医会の専務理事の忍さんは、事故発生直後から県警からの要請に応えられるよう歯科医会のメンバーに連絡をとった。そんな忍さんの元に悟さんからも連絡があった。「人手は足りている」と言っても「絶対に行く」と譲らなかった。「遺体を確実に、少しでも早く遺族の元に返す」。何も語らなくても、忍さんは父から受け継いだ使命感でつながっているような気がしたという。
>　遺族に遺体を引き渡す際、確認結果を説明するために忍さんが付き添った。変わり果てた肉親と対面して傍らのＪＲ職員につかみかかるケースもあった。そんなとき、忍さんは「私も日航機事故で父親を亡くしました」と語りかけた。穏やかな語り口に、その男性はつかんでいた手を離し、話に聞き入った。「遺族の立場に立ったことがあるから分かることもある」と忍さんは話した。
【2005年6月7日　産経新聞】

　お亡くなりになった方々のご冥福をお祈り致します。

　歯科医の仕事は生きた人間の虫歯を治すことだけではないことを知りました。ご遺族の気持ちを思うと、迅速な遺体の身元確認は極めて重要な仕事です。
　顔や体型、衣服や持ち物から身元特定される場合が多いのでしょうが、そうでない場合、つまり腐敗していたりバラバラになっていたり皮膚がはがれていたりなど損傷の激しい遺体を特定するためには、歯の形や治療痕は有効な判断材料であり、そのような遺体を見ることは、気持ち悪いでしょうし異臭がするでしょうし、とても大変なことだと思います。
　それを熱心に積極的にやられている歯科医の先生に敬意を表します。

　最後に、弟さんである悟先生がホームページのコラムに３年前に書いた文章です。

>今日は日航機事故の２０年と言う事で
>各局で特番がありました。
>２局の取材があり出演しましたが
>楽しい番組でもないのでお知らせしていません。
>偶然見る人がいればいいかなと思いました。しかし今日
>当時の映像を目にした瞬間、さまざまなことが思い出され
>冷静に見ようと思っていたのですが
>泣けて泣けて仕方ありません。
>まあ年のせいで涙もろくなっているのかもしれませんが。
>JRの事故もそうですが教訓は生かされているのか、
>人命より利益が優先ではないのか、
>この２０年で安全に対する何が変わったのかと
>問いただしたいのですが
>どうにもやりきれない気持ちです。
>今日は親父が好きだったブランデーで
>献杯します。オヤジありがとう。
【2005/08/12　丹波市山南町：河原歯科医院コラム】

管理者の方へ
歯科医院の口コミ情報ではありませんが、是非掲載して下さい。お願い申し上げます。